Wan 3.0を検討するときは、「動画を生成できるか」と「ローカルで動かせるか」を分けて考える必要があります。2026年8月30日時点で公式資料から確認できる中心的な利用経路は、Alibaba Cloud Model Studioのホスト型モデルです。公式APIには wan3.0-video と wan3.0-video-prime が掲載され、テキスト、画像、音声、動画、文書などを使った生成・編集・延長に対応しています。
一方、公開リポジトリにApache License 2.0のLICENSEがあることだけで、Wan 3.0の推論コードやモデルウェイトまで公開済みとは判断できません。現時点で確認できた公開物と、まだ確認できないものを切り分けたうえで、まずホスト型で自分の素材を試すのが安全です。
先に結論:公式に確認できること、できないこと
| 判断項目 | 2026年8月30日時点の確認結果 | 実務上の扱い |
|---|---|---|
| 公式のモデル名 | wan3.0-video、wan3.0-video-prime | 利用するリージョンのModel Studioで表示・権限を確認する |
| 提供形態 | Alibaba Cloud Model Studioのホスト型API | APIキー、モデル、エンドポイントを同じリージョンにそろえる |
| 主な入力 | テキスト、画像、音声、動画、文書ファイル、公開リンク | モードごとの排他条件と形式・容量制限を送信前に確認する |
| 出力時間 | 動画入力なしでは2〜30秒。既定値は5秒 | 「常に30秒出力」ではない。必要時間を明示する |
| 動画を入力する場合 | 入力動画の長さ+出力動画の長さが30秒以内 | 12秒の入力動画なら、出力は最大18秒として設計する |
| 出力 | MP4、30fps。結果URLは24時間有効 | 完了後すぐに保存し、URLを恒久保管場所にしない |
| 公開コード・ウェイト | Wan 3.0の推論コードやウェイトは、確認した公式公開先では見つからない | ローカル導入を前提にGPUやComfyUI構成を決めない |
| 実品質 | 30秒の一貫性、字幕、音声同期などは今回独立検証していない | ベンダーの作例ではなく、自分の素材で受け入れテストする |
公式資料には「preview」と記されたAPIリファレンスがある一方、モデル公開ページでは一般提供と案内されています。したがって、すべてのアカウントで同じSLAや利用資格が保証されるとは限りません。料金、クォータ、対象リージョン、支払い条件は、実際に使うアカウントのコンソールで確認してください。
Wan 3.0の公式機能はどこまでか
公式APIリファレンスでは、次の用途が一つのホスト型モデル群にまとめられています。
- テキストから動画を生成する
- 先頭フレーム、または先頭・末尾フレームを指定して動画化する
- 画像、動画、音声を参照素材として使う
- 既存動画を編集・延長する
- 文書ファイルや公開リンクを制作素材として渡す
参照素材は無制限ではありません。公式記載では、参照画像は最大10点、参照動画は最大5点かつ合計15秒以内、参照音声は最大5点かつ合計15秒以内です。文書は doc、xls、ppt、pdf、txt、key、pages、numbers、md などが案内され、1回につき1ファイルまたは1リンク、100MB以下、50ページ以下という条件があります。各形式にはさらにサイズ、解像度、アクセス可能性などの条件があるため、最終的には送信時点の公式リファレンスを確認してください。
また、先頭・末尾フレームを使うモードと、参照ファイルやリンクを使うモードには組み合わせられない条件があります。「使える入力を全部入れる」のではなく、今回の動画で何を固定したいかを先に決めるほうが失敗を減らせます。
「最大30秒」の正しい読み方
30秒は、すべてのリクエストに追加される出力尺ではありません。
- 動画入力がない場合:
durationは2〜30秒の整数。既定値は5秒 - 動画入力がある場合:入力動画長+出力動画長が30秒以内
duration: -1:スマート時間推奨を有効化
たとえば、15秒の参照動画を入力した場合、出力動画に指定できる長さは最大15秒です。20秒の入力動画から30秒の新規動画を作る、という合計50秒の設計は条件を満たしません。延長や編集を行う場合も、「素材の尺」と「欲しい出力尺」を先に足し算してからリクエストを組み立てます。

open source、公開コード、公開ウェイトを混同しない
「Wan 3.0はopen sourceか」という問いに、リポジトリの有無だけでYes/Noを返すのは危険です。少なくとも次の四つは別々に確認する必要があります。
- 紹介文や仕様が公開されているか
- 推論コードと依存関係が公開されているか
- 学習済みモデルウェイトをダウンロードできるか
- コードとウェイトそれぞれに、利用条件を定めるライセンスが付いているか
2026年8月30日の確認では、AlibabaCloud-Official/Wan3.0 の公開mainブランチにあったのは README.md と LICENSE の2ファイルでした。推論スクリプト、依存関係ファイル、チェックポイント、タグ、release assetは確認できませんでした。LICENSEはApache License 2.0ですが、これはそのリポジトリで実際に配布されているWorkに適用されるものです。そこに存在しないモデルウェイトの利用許諾まで自動的に意味するわけではなく、商標権も付与しません。これは法的助言ではありません。
さらに、公式のWan-Video GitHub organization の公開リポジトリ一覧と、Wan-AIのHugging Faceモデル一覧にも、確認時点ではWan 3.0と一致するコードまたはウェイトの公開物が見当たりませんでした。
この観察から言えるのは、「確認した公式公開先では、現時点のWan 3.0ローカル実行物を確認できない」ことまでです。今後の公開、別名の配布、別の公式配布先を否定するものではありません。「永久にクローズド」と断定せず、導入時に同じ三つの公式公開先を再確認してください。
文書や参照素材から動画を作る30秒ワークフロー
ここでは、資料を短い説明動画にするケースを例にします。目的は「30秒を使い切ること」ではなく、入力制約を守り、検収できる出力を手元に残すことです。
1. 1本の動画で伝える結論を一つにする
50ページの資料をアップロードできても、30秒で50ページ分を説明できるわけではありません。まず「視聴後に相手が何を理解し、何をするか」を一文にします。次に、その結論を支える数字、場面、固有名詞だけを抜き出します。
例:月次レポートなら、「売上が伸びた」ではなく「新規顧客の増加が売上差分の主因で、次月は継続率を確認する」のように、結論と次の行動を固定します。
2. 入力モードを一つ選ぶ
目的に合う最小限の入力を選びます。
- 内容の要約が中心:文書ファイルまたは公開リンク
- 見た目を固定したい:先頭フレーム、または先頭・末尾フレーム
- 人物・商品・音の雰囲気を参照したい:reference image / video / audio
- 既存映像を修正したい:video editing またはextension
モードをまたいで素材を盛り込む前に、公式リファレンスの排他条件を確認します。非公開資料を公開URL化する場合は、社内の情報管理ルールも優先してください。
3. 送信前に制約を計算する
次のチェックを通します。
- 文書:1ファイルまたは1リンク、100MB以下、50ページ以下
- 参照画像:最大10点
- 参照動画:最大5点、合計15秒以内
- 参照音声:最大5点、合計15秒以内
- 動画入力あり:入力動画長+出力動画長が30秒以内
- 動画入力なし:出力は2〜30秒
実際のリクエストJSONは、利用リージョンの最新APIリファレンスにあるフィールド名と例に合わせてください。概念上は、モデル、目的を述べたprompt、選んだmedia type、素材、duration を一組にし、出力尺を曖昧にしないことが重要です。
4. promptに「内容」と「検収条件」を書く
資料の丸投げではなく、次の四点を短く明示します。
- 誰に見せる動画か
- 30秒以内で伝える一つの結論
- 必ず使う事実、数字、名称
- 読めない文字や事実の創作を避けるなどの禁止事項
たとえば、「日本の営業チーム向け。20秒。資料の3ページにある新規顧客数と継続率だけを使い、結論→根拠→次の確認事項の順にする。画面内の数値を創作しない」のように、素材の選択範囲まで指定します。
5. 非同期タスクを作成し、完了までポーリングする
Wan 3.0の公式ホスト型フローは非同期です。生成リクエストを送ると task_id が返るため、そのIDで状態を確認します。APIキー、モデル、エンドポイントURLが別リージョンに分かれていると、権限や呼び出しの問題につながります。三つを同じリージョン・ワークスペースでそろえてください。
待機処理には、過度な連続照会を避ける間隔、タイムアウト、失敗状態の記録を入れます。結果が返らないときに同じタスクを無制限に再送すると、重複生成や費用の把握漏れが起きます。
6. 成功直後にMP4を保存する
公式ガイドでは、成功した出力はMP4・30fpsで、結果URLの有効期間は24時間です。URLを成果物として共有するだけでは、翌日以降に再生できなくなる可能性があります。
生成完了後は、MP4を管理下の保存先へダウンロードし、task_id、使用モデル、入力素材の版、prompt、duration、生成日時と一緒に記録します。機密資料を扱う場合は、保存先と保持期間を社内ルールに合わせます。
7. 採用・再生成・中止を判定する

少なくとも次の項目を、実際の素材で確認します。
- 資料にない数字、名称、因果関係を作っていないか
- 人物、商品、背景、小物が途中で不自然に変わらないか
- ナレーションと映像のタイミングがずれていないか
- 画面内の日本語や数値が読めるか
- 尺、解像度、フレームレートが用途に合うか
- 保存したMP4が最後まで再生できるか
Alibaba Cloud自身も、現時点で音声の質感と画面内文字の正確さには改善余地があると記しています。重要な字幕や数値はAI生成映像に焼き込ませず、後工程で正確なテキストを重ねるほうが管理しやすい場合があります。
今回、30秒動画の時間的一貫性、人物・商品の忠実度、音声同期、字幕精度、待ち時間、失敗率は独立検証していません。公式の作例は機能の紹介には使えても、自社素材での合格を保証するものではありません。最初は低リスクな1本で試し、合格基準を満たさなければ再生成回数を決めて中止します。
第三者の「Wan 3.0生成ツール」を使う前の確認
検索結果には、Wan 3.0を名乗るオンライン生成ツールやAPIラッパーもあります。しかし、ランディングページの見出しだけでは、公式モデルが実際に選択・実行されることは証明できません。
利用前に、次を確認してください。
- 生成画面に実際のモデル名が表示され、選択できるか
- disabledのボタンや別モデルの既定選択になっていないか
- 公式仕様にない「ネイティブ4K」などの主張に一次資料があるか
- 公式APIのどのリージョン・モデルへ接続するか説明されているか
- 入力素材、生成物、ログの保存・削除条件が明記されているか
第三者サービスを使うなら、まず短い非機密素材で、返されたファイルの実体、尺、解像度、音声、モデル表示を確認します。APIラッパーのリポジトリが公開されていても、Wan 3.0本体のウェイト公開とは別問題です。
よくある質問
Wan 3.0はローカルPCやComfyUIで動かせますか?
2026年8月30日時点で確認した公式GitHubとHugging Faceの公開先には、Wan 3.0の推論コードやダウンロード可能なウェイトを確認できませんでした。そのため、現時点では公式ホスト型APIとして計画し、Wan 3.0のローカル導入を前提に機材を購入しないのが安全です。今後公開状況が変わる可能性はあります。
Apache License 2.0ならモデルウェイトも自由に使えますか?
いいえ、そのLICENSEが置かれているだけでは、リポジトリに存在しないウェイトまで許諾されたとは判断できません。配布物の実体と、それぞれに適用されるライセンスを確認してください。商標権も別です。
30秒の入力動画から30秒の新しい動画を作れますか?
公式のduration条件では、動画入力がある場合、入力動画長と出力動画長の合計が30秒以内です。30秒の入力に30秒の出力を追加する設計は、この条件を満たしません。
出力URLをプロジェクトに貼っておけば保存になりますか?
なりません。公式ガイドではURLは24時間有効です。完了後すぐにMP4を管理下の保存先へダウンロードし、再生確認まで行ってください。
迷ったら、まずこの順で判断する
Wan 3.0の導入判断は、華やかな作例よりも境界確認から始めます。
- 自分のリージョンとアカウントで公式モデルを利用できるか確認する
- ホスト型APIと公開ウェイトを混同しない
- 入力動画を含む場合は、入力+出力を30秒以内に収める
- 一つの結論に絞った素材で非同期タスクを試す
- 24時間以内にMP4を保存し、自分の合格基準で検収する
ローカル実行が必須なら、公式のコード、ウェイト、ウェイト向けライセンス、ハードウェア要件がそろうまで待つか、公開物が確認できる別モデルと比較してください。ホスト型で進められるなら、Wan 3.0 API reference と公式生成ガイドを、利用リージョンのコンソールと突き合わせてから最初のテストを始めるのが確実です。



